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軍艦島へ

「吉野さん、来月の取材ですが、軍艦島になりました」
とクライアントさんから電話が来たとき、
内心私は思いっきり凍りついていた。何故って私、船がとっても苦手なのだ。

小さい時は九州に住んでいたのだが、
長い休みになると旅好きの両親が国内のあちこちに連れて行ってくれた。
マイカー移動なので船で飛距離を稼ぐことが多く、
九州~関東、九州~四国、九州~離島など長距離フェリーにのることが多かった。

そのうちの一回、台風の日に船に乗ることになり、
大時化の日、今にも沈むかと思うほど船が揺れたことがあったのだ。
真黒くうねる海。絶叫しつつ、船につかまる私。
以来、船が怖くてならない。

その後、大学進学とともに上京した私は国内のあちこちを旅するようになった。
18きっぷや周遊券を使い、ユースホステルをねぐらにしつつ何週間も放浪する。
いかにも学生らしい国内版バックパッカーだったのだが、
その頃には礼文島に行きたくて稚内のフェリー乗り場まで行ったのに、
怖くて船に乗れなかったということもあった。

まさか取材で船に乗ることになるとは…。
しかもネットを見ると軍艦島周辺は波が荒く船も揺れるとか書いてあるではないか。
しかし、仕事なので行かないわけにはいかん。

そんなこんなで取材日までは
大荒れの海で船におびえる夢に幾度となくうなされ、
怯えつつも意を決して長崎に向かったわけなのです。

(その2に続く)
# by lyrica-sha | 2013-05-01 00:00 | 取材日誌

干し柿

東北をまわっていると、柿の木が多いことに気がつく。

だだっぴろい平野と、やけに高い空。
そして道ばたのあちこちの民家では柿がなっている。
これを見ると、ああ東北らしいなぁと思う。


庄内平野で干し柿を干す風景を見た。
朝の光の中、オレンジ色がいっぱいに並ぶ。
元気が出てくる色。

干し柿_c0303307_1502748.jpg

# by lyrica-sha | 2013-03-09 01:00 | 取材日誌

ほっとゆだ駅

北上線でほっとゆだ駅へ。
小一時間ローカル線にゆられて。

そう、私が好きだったのは、こんな時間だったと
遠い昔にローカル線であちこち放浪したのを思い出して。

駅をおりると雪が輝いている。
雪は不思議。
音も心のざわめきもスッと吸いこんでしまうから。

ほっとゆだ駅_c0303307_2351667.jpg

# by lyrica-sha | 2013-03-08 00:00 | 取材日誌

八戸ブイヤベース

豊富な青森食材をフレンチで味う「まるごとあおもりガストロノミー」へ行ってきました。
会場は代官山パッション。

サバやイカのイメージがある八戸港は実は500種類もの魚が水揚げされるそう。
その八戸の魚介類をふんだんに使った料理が八戸ブイヤベース。
八戸ではいくつかのレストランでそれぞれ違う味が楽しめるそうで、
この日はレストランパッション風にアレンジされた八戸ブイヤベース。

ヒラメ・メバル・スズキ・テクビイカ・ムール貝・ホタテなど新鮮な八戸の魚介がたっぷり入って、
複雑で贅沢な味わいのスープはとっても美味。
八戸流は「二度おいしい」というのが決まり事とのことで、
この日の「二度美味しい」で出てきたのはブイヤベースのソースを使ったイカスミとウニのパスタ。
青森名物であるいちご煮にインスパイアされたパスタとのこと。
おいしかったことは言わずもがな。

「紅の夢」のデザートやりんごブランデーなど、
林檎を使ったメニューも多いところもさすが青森。

会場のレストランパッションはミシュランに掲載されたレストランでもあるそうで、
大きな暖炉にパチパチと火がはぜ、非日常を醸し出してる。
看板メニューのカスレという料理でこれははじめて食べたけれど、
豆と肉の煮込み料理で思いのほか濃厚。

青森はまだ行ったことのないエリアが多いので今年こそは取材に行ってみたい。

八戸ブイヤベース_c0303307_114543.jpg

# by lyrica-sha | 2013-03-07 08:00 | 取材日誌

日本のマチュピチュへ

兵庫県の但馬地方に雲海に浮かぶ山城が見られる場所がある。
日本のマチュピチュとも天空の城とも呼ばれる竹田城跡へ取材に行ってきた。

竹田駅を降り立つと小雪がちらついていた。明治に建てられたというレトロな駅舎の向こうには山がそびえ、その頂に何やら浮かび上がっているのは…あ、あれが竹田城跡だ。まちからズームで撮るとこんな感じ。これからあそこにのぼるぞー。

日本のマチュピチュへ_c0303307_036913.jpg


取材に行ったのは2月。季節はずれで雲海も出ないだろうし、雪の日は駅裏の登山道は危ない。というわけで山城の郷ルートと呼ばれる傾斜のゆるやかな道から登ることにした。城跡の入り口につくと頭上に何やら遺跡のような異様なものが見えている。大手門入り口から石段をのぼると、穴太衆と呼ばれる石垣作りの名工集団によってつくられた石垣はまるで古代遺跡。

数百年前に主を失い、自然廃城した城には石垣だけが残る。足元の土から瓦の破片が頭をのぞかせていて、長い時間をかけて城が少しずつ風化したことを偲ばせる。煮炊きをした井戸の跡を見たりすると、山城での生活が想像できて楽しい。

20分ほどのぼると山頂付近に。さすがに山の上、風が強い。びゅうびゅうと吹く強風によろけながら、本丸跡へ。吹き上げる風で立っていてもぐらぐらするくらい。石垣のへりにつかまり、夢中で写真をとる。


なんて景色。こんなところが日本にあったんだ。
遺された石垣が幾何学模様を織り成して、綺麗だ。

日本のマチュピチュへ_c0303307_0412851.jpg


雲海が出ていて、朝日に包まれたりしたら、神々しいんだろうな。
雲海がなくても、何もかも忘れてしまいそうな、すがすがしい絶景。
人生に躓いたり、辛いことがあって、竹田城跡に来たけれど、この景色を見たら全部忘れてしまった。そういう人が多いという。納得。


ちなみに最後の城主は出兵した先で亡くなり、この城に帰ることはなかったという。悲劇の城主。きっと最期にこの竹田城からの景色を眺めたかったことだろう、と想像。


# by lyrica-sha | 2013-03-05 00:00 | 取材日誌

日本の旅ライター・旅エッセイスト吉野りり花のブログです。日本の風景を詩的に綴る旅エッセイ、食の民俗学、食べるお守り、神々の食・神饌について書いてます。著書『日本まじない食図鑑~お守りを食べ、縁起を味わう』『ニッポン神様ごはん~全国の神饌を訪ねて』(青弓社)。執筆ご依頼やお問い合わせはサイトの問い合わせ欄よりご連絡ください。https://lyricayoshino.com


by 吉野りり花