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蘇とアマビエと、コロナ除けのまじない食

そろそろ桜の花が散り始めました。


奈良の大神神社/狭井神社の鎮花祭をたずねた時、

「昔は舞い散る花びらにのって

疫神が広がり疫病を流行らせると信じられたから、

鎮めるために薬草を供えた」と聞きました。


その時は「今では考えられないことだけど、

昔は切実な祈りだったんだろうな」と

どこか遠い世界の話のように感じていました。


けれど今、疫病がなくなりますようにと祈る気持ちは本当に切実です。

まさか現代にも同じような気持ちで祈ることになろうとは

あの時は想像だにしませんでした。



鎮花祭では

神様に薬草の「忍冬(スイカズラ)」と「百合根(ユリネ)」を

神饌としてお供えし、

別名「薬まつり」と呼ばれます。

下は鎮花祭の神饌です。


蘇とアマビエと、コロナ除けのまじない食_c0303307_16002731.jpg



鎮花祭については



に詳しく記しましたのでご興味ある方は読んでみて下さい。




さて、最近は新型コロナウィルス関連のニュースや

政治の動きを知りたくて、

しばしばタイムラインを眺める日々でした。

そんな中、昨日とても興味深いことを発見しました。



ついにコロナ除けのまじない食が誕生した模様。



ちなみに、まじない食というのは

「厄除や招福を祈って食べる食べ物の総称」です。


『日本まじない食図鑑 お守りを食べ、縁起を味わう』


という本を書くにあたり、親しみやすいキーワードを作りたくて、

私が作った造語です。


今回のコロナ禍も疫病との戦いなので、

世の中の人が皆が疫病除けを祈っているわけですが

これまでの流れは下記のようなもの。



まず学校の一斉休校が要請され、

給食が急になくなってしまいました。

すると給食用の牛乳が余ったことから、SNS上で「蘇」が流行。



「蘇」とは古代(飛鳥時代~平安時代)に薬として食されていた乳製品で

牛乳を大量に煮詰めて作ります。

牛乳大量消費レシピとして投稿され、脚光を浴びた形です。

(蘇のことも『ニッポン神様ごはん』に書きました。

奈良で古代料理を再現した料理が食べられるところがいくつかあり、

お土産としても販売されているんですよね。


下の写真は私が奈良パークホテルで食べた「蘇」です。


蘇とアマビエと、コロナ除けのまじない食_c0303307_22254758.jpg


ネット上に「蘇を作ってみた」という報告が続々とアップされるのを見た私は、

まさかこんな形で蘇が現代によみがえるなんてと

驚きながら眺めていました。



そして次は「アマビエ」が話題に。

こちらも話題になりすぎてもはや説明不要かと思うのですが、

ざっくりいうと将来の疫病の流行を知らせ

自分の絵姿を見せることで疫病除けになると告げた存在とされます。


そしてついに、アマビエをモチーフにした和菓子まで売り出されました。



これは……

コロナ除けのまじない食が誕生したということじゃないですか。



昔は病気になるメカニズムが解明されていませんでしたから、

疫病の流行は神仏の怒りであるともとらえられました。

そこで疫病の収束を願って、神仏に祈り、捧げものをしたわけです。

(何を供えたかを色々書くとかなりの沼にはまるのでここでは割愛)



今、各地で受け継がれている病除けのまじない食は、

神仏に供えることで神仏の力の宿った食べ物を

食すことで神仏の加護を得て、

疫病を除けるという考え方がその起源にあります

(というか私はそう考えています)。




ご神仏のご加護を食してとりこむことについては

下記で拙文が読めます。

ご興味ある方は読んでみて下さい。


『コンサルタント』特集 食と祭り~祈りを食べる



具体的には、まじない食の主流は

神様や仏様にお供えしたもののお下がりをいただき、

ご加護をいただくというもの。

(ぶと等)



ほかに、商売をする人が「厄除」や「疫病除け」というところに目を付けて、

これを売れば商売になるし、皆も喜ぶし…といった形で

商品化されたものもあると思います。

昔からある寺社の参道で販売される厄除団子などはこちらのパターンもあり。

近年増えた御神水サイダーとか御神酒ケーキなどは

両方の要素が混ざったものだと考えています。



ですので今回

アマビエをモチーフにした和菓子のことを知ったとき、

かなり考えさせられました。



どうにかこの疫病の流行が早く収束してほしいと考えた人が、

疫病除けにちなんでTLにアマビエを投下した。

そして疫病除けを祈る人達が、

少しコロナ疲れしていた気分を変えたいという思いも手伝って、

自分でもアマビエの絵を書いたりグッズを作ったりして楽しんだ。

アマビエの流行をネットニュースがこぞってとりあげた。

追ってテレビなどもとりあげていましたね。

そして和菓子屋さんがこれを知り、

コロナ除けの和菓子を作った。


遠い昔に、疫病が流行り、疫病除けを祈ったことから、

その後に疫病除けのまじない食がいろいろと生まれたのと同じ(ではないが近い?)流れを、

現在進行形で見ることができるということは興味深いなぁと。


ただし今回は神仏に供えたもののお下がりとはまた意味合いが違い

神仏ではなくアマビエであり、

また直接に絵姿が描かれたものなので、

食してよいものかと考えると

私は躊躇ってしまいますが……。



ただ、こういうものが

今を変化していく現代の民俗学なんだなぁとも思いました。


また、こうやって心のゆとりを保ちながら

疫病をのりこえる糧になるというのも

まじない食の役割なのかもとも考えました。



ウィルス騒動で気分がざわざわすることも多かったのですが、

こんな形で自分が追っているテーマとリンクする流れが出てくるとは。

気分もずっと塞ぎがちでしたが

アマビエ和菓子のことを知ってからつい夢中で考えているので、

私もアマビエ和菓子の話題に救われたのかもしれません。


ひとまず色々考えて

現代のまじない食についても原稿を書こうと思います。


by lyrica-sha | 2020-04-12 12:48 | 食べるお守り「まじない食」

日本の旅ライター・旅エッセイスト吉野りり花のブログです。りり花はlyricalから、「日本の旅を詩的に」がテーマ。食の民俗学、各地の食べるお守り、神々の食を取材しています。著書『日本まじない食図鑑~お守りを食べ、縁起を味わう』『ニッポン神様ごはん~全国の神饌を訪ねて』(ともに青弓社)。ブログは徒然更新、最新情報はtwitterでつぶやいてます。https://lyricayoshino.com


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