人気ブログランキング | 話題のタグを見る

もうすぐ神在月の出雲へ~龍蛇神とドウメ節と

出雲神話の舞台・出雲へ行ってきました。

もうすぐ神在月の出雲へ~龍蛇神とドウメ節と_c0303307_17111513.jpg

10月のことを神無月というのは、八百万の神々が10月に出雲にお集まりになるため。
反対に神様が集結する出雲では10月を神在月と呼ぶというのは有名な話です。
旧暦の10月なので、今の暦でいうと、10月下旬くらいからが神在月になります。
もうすぐですね。

私は学生のときに旅行でたずねた以来の訪問なので
かなり久しぶりだったのですが、
神門通りが今風に変わっていて、時の流れを感じました。
鳥居のすぐ前にスターバックスがあることに、うぉ?とめんくらいつつ、
悩んだ結果、大社珈琲というお店でひと休み。
ロゴに大注連縄と珈琲豆がデザインされてて、凝ってます。
出雲ぜんざいケーキもあり、地元コンテンツがばっちり活かされていて素敵。
珈琲もおいしい。

さて、一歩境内に入ると、神門通りの賑やかで今っぽい雰囲気から、やはり空気が変わります。
参道が坂を下る形になっているのが珍しい。


もうすぐ神在月の出雲へ~龍蛇神とドウメ節と_c0303307_17113715.jpg

境内からは巨大な木の柱が出土しており、
それはおそらくかつての巨大神殿を支えた「心御柱」「宇豆柱」ではないかと考えられているそうです。
境内には出土地点が示されています(地面の○印がそれ)

もうすぐ神在月の出雲へ~龍蛇神とドウメ節と_c0303307_17115868.jpg


これについては、下記の國學院大學メディアに詳しく記されていました↓



今回はじめて知ったのが「龍蛇神」の存在です。
神在月には神々が出雲にお集まりになりますが、
神々の先導役を務めると考えられているのが「龍蛇神」。
出雲では地元の海に漂着するウミヘビのことを龍蛇神と考え、
浜にウミヘビが流れ着くと、神社に奉納するのだそう。
神事の後には、家庭でも龍蛇神をお祀りするとのことで、
取材先の神棚にも龍蛇神が祀られていました。
しかも龍蛇神様の祠がいくつも。龍蛇神信仰が篤いことにびっくり。

『まじない食図鑑』に、龍神と水神と云々~と少し書きましたが、
龍蛇神はまた龍神や水神とはまた違う系譜ということなのでしょうか。
海人族と関係があるのか?? 気になるなぁ。

国譲り神話の舞台となった稲佐の浜は、
神在月に神々がお集りになり、「神迎神事」が行われる地でもあります。
ここは夕陽の名所としても有名ということで、
陽が沈むまで1時間ほど海を眺めました。
弁天島の向こうの空、その色合いが刻一刻とうつりゆき、
複雑で一言ではとても言い表せないような色彩に変化していきます。

もうすぐ神在月の出雲へ~龍蛇神とドウメ節と_c0303307_17382575.jpg





もうすぐ神在月の出雲へ~龍蛇神とドウメ節と_c0303307_17395429.jpg




もうすぐ神在月の出雲へ~龍蛇神とドウメ節と_c0303307_17401167.jpg





もうすぐ神在月の出雲へ~龍蛇神とドウメ節と_c0303307_17402989.jpg



もうすぐ神在月の出雲へ~龍蛇神とドウメ節と_c0303307_17405537.jpg



もうすぐ神在月の出雲へ~龍蛇神とドウメ節と_c0303307_17411052.jpg

この色、何色って言えばいいんだろう?
稲佐の浜の夕陽は、出雲観光のハイライトとしてもおすすめしたいです。
夕陽の前30分くらいから、日が沈んでしばらくまでが色の変化が楽しめていいと思う。

もうひとつ、今回は「ドウメ節」でだしをとった
出雲蕎麦を食べられたのも収獲でした。
ドウメ節は、ウルメイワシの骨をとりのぞき、蒸して乾燥させたもので
昔はよく使われていたそう。
手間がかかるため、最近はあまり使われないそうですが、
「出雲蕎麦の老舗は今もドウメ節を使っていますよー」と教わって、食べてみました。
以前も確か同じ店で食べ、不思議な味のつゆだなーと思ったのですが、
謎がやっと解けました。
昆布、鰹節、いりこ、あご、どれとも違う、強い個性のあるだしです。
それでいて薄めの味付けで、江戸の濃いそばつゆとは全く違います。


取材先への道すがら、黄泉比良坂を通りかかったのも、興味深かったです。
黄泉の国との境目にある黄泉比良坂は、イザナギとイザナミの最後の神話に出てくるあの場所。
変わり果てた姿で追いかけてくるイザナミから逃げようとしたイザナギが
追手に桃の実を投げた神話の舞台です。
私は日本文学専修だったため、学生の頃は古事記の講義も必修だったのですが、
教授が黄泉比良坂について熱く語っていたのを思い出しました。

とはいっても、思い出すのは別のこと。
確か講義で私はちょうど黄泉比良坂のあたりで発表担当で、
ひどく不勉強だったために、教授に思いっきり怒られた思い出があるんですね。
あちこち寄り道しつつ、ぐるっと回って興味が大学の頃と同じところに戻ってきたことを実感している私は、
正直、先生の言う通りにあの頃もっとちゃんと勉強しておくんだったと悔やんでおります。。
先生ごめんなさい。やっぱり後悔先にたたずでした。


翌日、取材後に時間が余ったので、少し寄り道。
有名な「出西窯」へ行ってみました。
ここは工房が自由に見学できるのがいいです。
普段使いのお皿を買ってきました。

もうすぐ神在月の出雲へ~龍蛇神とドウメ節と_c0303307_20170140.jpg


もうすぐ神在月の出雲へ~龍蛇神とドウメ節と_c0303307_20205648.jpg
今回は、龍蛇神のことを通じて、出雲には神話や信仰が色濃く息づいていることを感じました。
一昨年、諏訪を訪れた時、神話の向こう側に広がる土着信仰の世界を知り、
それがあまりに奥深くて驚いたのですが、当然ながら、出雲もとっても奥深い。

日本神話の世界でもひときわ特別な場所。
神在月にもう一度訪れて、滞在してみたいです。

by lyrica-sha | 2019-10-23 20:59 | 取材日誌

日本の旅ライター・旅エッセイスト吉野りり花のブログです。日本の風景を詩的に綴る旅エッセイ、食の民俗学、食べるお守り、神々の食・神饌について書いてます。著書『日本まじない食図鑑~お守りを食べ、縁起を味わう』『ニッポン神様ごはん~全国の神饌を訪ねて』(青弓社)。執筆ご依頼やお問い合わせはサイトの問い合わせ欄よりご連絡ください。https://lyricayoshino.com


by 吉野りり花